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「私たちの研究所へようこそ」
穏やかな声は、長い黒髪をひとつに結った男から発せられた。
声とは裏腹に、眼鏡の奥の冷たい瞳は視線を逸らさなければ凍り付いてしまいそうなほど。
「どうしてわかった?」
最低限の物音しかたてていないはずだ。
扉の裏に潜んでいたのがどうしてバレてしまったのか、キースは疑問に思わずにいられなかった。
「なに、簡単なことですよ」
くくく、と男は冷ややかな笑みを零した。
「私もお嬢さんと同じ半魔物なんですから」
男の言葉に、エレンはもうひとつの特性を思い出した。
半魔物同士は、近距離なら相手の居場所が手に取るようにわかるというのだ。
「知られたからには、生きて帰すわけにはいきませんね」
低い唸り声が聞こえる。
そちらに視線を向けると、ふたりの研究員が頑丈な鎖を握っていた。
鎖に繋がれているのは、床の軋むような鳴き声で叫ぶ二体の魔物。
巨大な怪鳥と、漆黒の毛を逆立てた獣の姿があった。
「生きて帰すな」
冷たい声を合図に、魔物が鎖から解放された。
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