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「……失敗作だな」
白衣の男は呟き、無残に横たわる魔物を冷ややかな目で見下した。
「おい、半魔物の女。おまえだけは助けてやるからこっちに来い」
感情のない機械のような声に、涙目のジャネットは顔を上げて男を見据えた。
「私と研究を進めないか? 大丈夫、殺しはしない」
男は口元に笑みを浮かべ、近づいてくる。
その歩みが少しばかり鈍くなる。
座り込んだままのジャネットの前に、セレが立ちふさがったのだ。
抜き身の短剣を握りしめて。
「近づくな!」
「子供に剣が扱えるわけがない。強がりはやめなさい」
なおも近づくことを止めない男に、セレの短剣が閃いた。
「グッ……」
傷つけられた腕を押さえ、男は低く呻いた。
真っ白い衣に、じわじわと朱が染み込んでいく。
顔を苦痛に歪めた男は、声を荒げて奥に向かって叫んだ。
「ヤツを出せ! 今すぐに!!」
しかし、何の返事もない。
男はもう一度口を開いたが、声が出ることはなかった。
「こいつらか?」
キースとエレンの足元で、魔物を連れてきた研究員が血の海に沈んでいる。
その様子を見て、男は言葉を失った。
「そっちがその気なら……容赦しないわよ」
エレンは槍を構え直した。
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