半魔物

10/18

8059人が本棚に入れています
本棚に追加
/469ページ
壁に追いやられた男に槍を突き付ける。 顔の真横、肌を掠めるか掠めないかのところで、銀色の穂先が止められる。 「なんでこんなことをするの?」 男は指の間から血を滲ませて傷口を塞ぎ、荒く息をしている。 エレンと、突き付けられた穂先とを交互に眺めていた。 「フッ……フハハハハッ!」 開き直りか、狂ったのか。 男は大口を開けて笑う。 「強い半魔物を媒体として、様々な動物や魔物と合成する。そうすれば、未知数の力を持つ凶悪で獰猛な魔物が出来上がるのさ」 「なんのために……?」 「金になるんだよ」 ――金? 「私たちが研究を進めることができたのも、力のある貴族の手助けがあったからだ。四つの大陸同士が平和なのは表面だけ。しかし裏では兵器を生み出し、いつ戦争を始めるかわからん……」 「黙れ!」 怒りで顔を赤く染めたキースが男の喉元に切っ先を向ける。 「父上がそんなことをするわけがない! その口を切り落としてやろうか!?」 「ふふっ……」 男は薄笑いを浮かべると、それっきり黙ってしまった。 ――!! エレンは背筋が凍るように冷たくなったのを感じた。 他に気付いた者はいないようで、至って普通の表情を浮かべている。 ほんの一瞬だったが、どこか遠くに強い魔力を感じた。 それも、とても邪悪な――……
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8059人が本棚に入れています
本棚に追加