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壁に追いやられた男に槍を突き付ける。
顔の真横、肌を掠めるか掠めないかのところで、銀色の穂先が止められる。
「なんでこんなことをするの?」
男は指の間から血を滲ませて傷口を塞ぎ、荒く息をしている。
エレンと、突き付けられた穂先とを交互に眺めていた。
「フッ……フハハハハッ!」
開き直りか、狂ったのか。
男は大口を開けて笑う。
「強い半魔物を媒体として、様々な動物や魔物と合成する。そうすれば、未知数の力を持つ凶悪で獰猛な魔物が出来上がるのさ」
「なんのために……?」
「金になるんだよ」
――金?
「私たちが研究を進めることができたのも、力のある貴族の手助けがあったからだ。四つの大陸同士が平和なのは表面だけ。しかし裏では兵器を生み出し、いつ戦争を始めるかわからん……」
「黙れ!」
怒りで顔を赤く染めたキースが男の喉元に切っ先を向ける。
「父上がそんなことをするわけがない! その口を切り落としてやろうか!?」
「ふふっ……」
男は薄笑いを浮かべると、それっきり黙ってしまった。
――!!
エレンは背筋が凍るように冷たくなったのを感じた。
他に気付いた者はいないようで、至って普通の表情を浮かべている。
ほんの一瞬だったが、どこか遠くに強い魔力を感じた。
それも、とても邪悪な――……
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