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「鍵はどこだ? アディスの監獄の鍵は!?」
キースは噛み付かんばかりの勢いで男の胸ぐらを掴んだ。
苦痛に顔を歪め、男は渋々答える。
「その棚の中……グッ……!」
ズブリ、と剣が男の腹に深々と突き刺さる。
「わりィな」
腹から剣を引き抜くと、男は前のめりに倒れた。
できれば殺したくはなかったが、こいつを野放しにしておくとまた同じことを繰り返しかねない。
ここに来た本来の目的。
キースはすぐ側の棚を開けると、束になった鍵を取り出した。
「よし! 引き上げるぞ!」
もはやここにいる意味はない。
放心状態のジャネットの腕を引き、部屋を後にした。
こんな気味の悪い場所には、一分たりとも長く留まっていたくなかった。
一行が去った後、倒れた男がピクリと動く。
僅かに顔を上げ、男は震える指先に力を集める。
「……逃が……さん」
指先から赤い光が弾け、飛び散った炎の粒が瞬く間に壁を、床を伝っていく。
それは油のたっぷり入った缶に引火し、大きな火柱が上がった。
男は口から血を流しながら、腹這いで部屋の奥に進んでいった。
頑丈な檻の中にふたつの赤い光が並んでいる。
闇から聞こえる、地を震わせるような低い唸り声。
「……ふふふ……はははは」
腕を伸ばし、べっとりと血の付いた指で檻の金具を外すと、重い鉄の扉が音をたてて開いた。
巨大な魔物が姿を現す前に、男はこときれた。
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