半魔物

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「こんな道通ったっけ?」 「だからさっきの角右だって言っただろ!?」 「右だった気がする、なんて曖昧だからいけないのよっ!」 「ねえっ! 待ってよー……」 エレンたちは迷っていた。 ただでさえ暗い廊下だ。 ランプの頼りない光だけでは、数歩先を見るのがやっとだった。 窓は頑丈に打ち付けられているため外を見ることはできない。 ひたすら出口を求め、勘を頼りに進んでいた。 「……焦げ臭い?」 一番初めに異変に気付いたのはエレンだった。 何かが焦げているような臭いが鼻をつく。 左右を確認したが、特に異常は見当たらない。 気のせいかと思ったが、後ろを振り返って、ぎょっとした。 白い煙が廊下に充満し、今にも追い付きそうなほど近くまで迫っている。 その奥で揺れるのは赤と橙色、燃え盛る炎。 ――火事!? 「急いで!」 「クソッ、何なんだよここは!?」 ほとんど暗闇の中を炎から逃げるように走った。 つまづきそうになりながらも出口を探す。 一刻も早く、ここから脱出しなければ―― 「……ウゥ」 空耳かもしれない。 でも、確かに聞こえた。 低い低い唸り声が。 普通の人間にとってはただの唸り声にしか聞こえなかったが、ジャネットだけには聞こえた。 怒り、悲しみ、苦しみ……そういったあらゆる負の感情が混ざりあった声が。 ――タスケテ ――ラクニナリタイ ――ドウシテ ――クルシイ ――コロシテヤル! 何十という声が、思いが伝わってきた。 怨念のような叫びに、耐えられなくなったジャネットはギュッと目を瞑る。 白煙の向こうに黒い影が揺れた。 「何か……来る!!」
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