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武器を構え、煙の中から影が現れるのを待った。
「グゥゥゥ……」
白煙の奥から姿を現した魔物を見て、全員の表情が凍り付く。
――これは……
思わず生唾を飲み込んでしまうほど、その姿は異形だった。
獅子の頭に、毛むくじゃらの胴体、左右に異なる大きさの翼を持ち、蛇の尾が真っ赤な口を開いている。
何種類もの動物の一部が複雑に絡み合い、一体の魔物を形成していた。
魔物。
いや、合成獣。
数多い魔物の中でも最も獰猛で、恐ろしいほどの破壊力を持つ魔物である。
身の丈は天井に達し、横幅は狭い廊下いっぱいに広がっている。
その後ろから追い掛けてくる深紅の炎。
エレンは槍を構えようとしたが、長い柄が壁にぶつかり思うように操れない。
キースの大剣も、狭い廊下で振り回すのは仲間を傷つける危険がある。
状況は最悪。
「ヤバいんじゃない?」
額から冷や汗を垂らして、キースは乾いた笑いを作った。
「どうするのよ!?」
「んなこと言ったってやるしかねーだろうが!」
咆哮とともに、鋭い鉤爪が振り下ろされる。
「グオォォゥ!!」
「危ねっ!」
咄嗟に後ろに跳び退き、一撃を躱す。
鉤爪が床から引き抜かれると、そこにはぽっかりと黒い穴が空いていた。
「もっと広い場所に!」
「こっちだ!」
煙が漂う中、先程の薬品庫に駆け込んだ。
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