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壁に燃え移った炎が室内を赤く照らす。
理想ほど広くはないが、武器を振るうのには十分な広さだった。
「さっさと片付けねぇと焼け死ぬぜ」
「そうね!」
少し遅れて、魔物が巨体を引きずりながら入ってきた。
棚が揺れて薬瓶が次々と落ち、破片が飛び散る。
「セレ! ジャネットをお願い!!」
動揺する丸腰のジャネットをセレに任せると、エレンは槍を強く握り締めた。
助走をつけて跳び、魔物の首を狙って槍を突き出す。
身軽さとスピードがエレンの武器だった。
厚い毛で覆われた太い首が目の前にある。
だが、魔物は巨体に合わない機敏な動きで、それを阻止した。
「うっ!」
頑強な翼によって槍は弾かれ、頭突きを受けたエレンの身体は簡単に吹っ飛んだ。
棚に背中を強く打ち、その場に倒れこむ。
割れたガラスの鋭い破片が、白い肌を切り裂いた。
「エレン!」
「テメー何しやがるっ!?」
魔物のすぐ背後で様子を伺っていたキースが、両手で構えた剣を振り下ろした。
しかし、両刃の剣が背中を真っ二つに裂く前に、蛇の尾がキースの足に絡み付いた。
「なにっ!?」
重心を崩され、キースは剣を握ったまま尻餅をつく。
魔物に視線を戻したそのとき、鋭い爪が振り下ろされた。
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