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「グォォォォォ!!」
空気を震わせ、耳が千切れてしまいそうなほどの絶叫が部屋に響いた。
「な、なんだ?」
何が起こったのかわからないまま、キースは床の上を転げ回る魔物に見入った。
赤い瞳には深々と短剣が柄まで突き刺さっている。
耳障りな叫び声をあげて身をよじらせる魔物から、小さな影が跳んで離れた。
火の粉が舞う中、静かに立っている黒髪の少年。
「セレ!?」
片目を失った魔物は怒り狂い、辺り構わず力任せに鋭い爪を振り下ろす。
棚が簡単に切り裂かれ、人が通り抜けられるほどの大きな穴が空いた。
突如現れた脱出口。
炎はすでに部屋中を包み込んでいる。
「逃げるぞ!」
へたりこんでいるジャネットの襟首を引っ掴み、キースは穴に向かって走った。
「セレ急げ……ッ!?」
振り返った瞬間、キースは言葉を失った。
目に入ったのは、倒れている金の髪の女。
――エレン!
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