半魔物

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エレンは両腕を支えにして体を起こそうとするが、まったくと言っていいほど力が入らない。 煤で黒くなった頬を冷たい汗が伝う。 炎はすぐ側まで迫っている。 赤く照らされた室内に陰りが差した。 不思議に思って顔を上げると、魔物の醜い顔がすぐ目の前にあった。 赤い瞳に自分の姿が映っているのを見て、スッと血の気が引く。 魔物の吐息が顔にかかる。 震える腕を叱り付けるが、思いとは裏腹に腕は動いてくれなかった。 「剣!」 セレがキースに腕を伸ばしながら叫ぶ。 声を受け、キースは腰の剣に視線を落とした。 大剣の破壊力は凄まじいが、その重さは半端ではない。 子供に――セレに扱える代物でないことは一目瞭然である。 だが、今はそんなことを言っていられない。 「受け取れ!」 キースはセレに向けて大剣を力いっぱい投げた。 頼みの綱はセレだけだ。 空を切って飛んできた剣を、セレは何の迷いもなく掴んだ。 両手で柄を握り締め、床を蹴って跳び上がる。 ためらうことはない。 今すべきことは……。 目の前の敵を殺すこと―― 醒めた紺色の瞳に、魔物の醜い頭が映った。 剣が振り下ろされる。 まるで、初めから剣の使い方を知っていたかのように。
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