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ゴトン、と魔物の首が音を立てて転がる。
それに続き、巨体が力なく横に倒れた。
「よっしゃ!」
セレが声のした方を向くと、すぐ隣にキースの姿があった。
だが、喜んでいる場合ではない。
炎に包まれた壁は今にも崩れそうだった。
「じっとしてろよ」
キースは身をかがめ、倒れたエレンをひょいと抱き上げた。
「……ちょっと!? 変なとこ触んないでよ!」
「ハイハイ……っとぉ!」
キースはエレンを抱え、壁の穴から飛び降りた。
それにセレも続き、雨に濡れた土の上に着地する。
地面に足を着けた瞬間、ドドドドッ……と建物が轟然と崩れ落ちた。
無惨に潰れた建物を、深紅の炎が包み込む。
「間一髪、だな」
張り詰めていた緊張が解け、キースは大きく息を吐いた。
研究所を焼き尽くした炎は隣接する建物に燃え移り、長い炎の壁ができていた。
――ミセリコルディも、もう終わりだな。
炎から離れたところに移動する。
「大丈夫か?」
エレンを地面に下ろし、キースは尋ねた。
「……なんとか」
腕に刺さったガラスを抜き、痛みに顔をしかめるエレン。
「あたしが魔法使えたらよかったのにね」
手持ちの薬で応急処置を施しながら、ジャネットは己の魔力の弱さを悔やんだ。
「……そういえば」
キースは辺りを見回す。
その視線の先には、勢いよく燃え上がる炎に目を奪われている少年の姿があった。
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