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「セレ」
「んー? なに、王子さま?」
不意に名前を呼ばれ、セレはゆっくりと振り返る。
その瞳はいつもと同じで天真爛漫に開かれていた。
剣を持った時とはまるで別人だ。
「キースでいい。おまえ、本当に記憶がないのか?」
「うん。名前ね、エレンからもらったんだよ」
建物から爆発音が起こる度に、セレは嬉しそうにはしゃいでいる。
こうして見れば、ただの子供。
だが、先程の戦闘を見ていたキースには、セレが普通の子供には見えなくなっていた。
幼い頃から剣術を学んできたこともあり、腕には覚えがある。
それが、こんな小さい子供に助けられてしまった。
――記憶が無くても剣の使い方は覚えてる……か。
まだ幼いが、確実に駒のひとりだっただろうと確信した。
あの剣捌きを見ると、以前はかなりの腕の持ち主だったに違いない。
――末恐ろしいな……
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