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少年が物珍しそうにきょろきょろ辺りを見廻していると、頭上に意外なほど優しい手が下りてきた。
「まずは、シャワーだな」
言われて、少年は自分が想像以上に汚れた格好をしている事に気付く。
路地裏の暗がりの中では気にもならなかったが、こうして明かりの下で見直してみると、確かに汚い。
服はそのままゴミ箱行き確実なくらいボロボロだし、視線を落とした掌も、細かい皺のひとつひとつがくっきり浮かぶくらい泥と垢で真っ黒だ。
「シャワールームはあっちだ。お前がシャワー浴びてる間に、飯の用意しといてやるよ」
ほれほれ、と犬でも追っ払うような仕種で若者に追われ、少年はシャワールームへと追いやられた。
「使い方はわかるな?」
しかし、シャワールームを見渡して、途方に暮れたような顔で見上げる少年に、若者は溜め息をつく。
「いいか、ココのダイヤルが温度調節で……」
意外に面倒見がよいらしい若者は、ひとつひとつ丁寧に使い方を説明してやってから、シャワールームを出て行った。
ドアの外でじっと聞き耳を立てていると、ほどなくして中から水音が聞こえ出す。
満足げに小さく頷いて、若者は食事の支度の為にキッチンへと入って行った。
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