第1話 #ffff00

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   「相変わらず正反対ですね、そっくりな双子なのに」  アイとカイは顔を見合わせるとばつが悪そうに苦笑した。  そう、この山崎姉弟は二卵性双生児なのである。一応生まれた順番で言えば、アイが姉でカイが弟。髪色が違わなければ、長年付き合いがあるシキでも同じ服を着られた時には見分けがつかないかもしれない。二卵性にしてはそっくりなこの双子、しかし決定的な違いがあった。  ――壊滅的に味覚が合わない。 「カイは甘党過ぎるのよ。そんなんじゃお客さんが胸やけ起こすわよ」 「アイが辛党過ぎるんだっつの。そんなんじゃ嫁の貰い手が逃げ出すぞ」  睨み合う双子。甘党と辛党。二人は味覚だけは相容れず、例えば卵焼きならカイは砂糖を大量に入れるし、アイはなんと七味唐辛子を大量に入れる。両親の苦労が目に浮かんでしまうほどの偏食ぶりだ。  そんなカイの作る菓子は確かに紅茶なしでは食べられないほど甘かった。  もはや日常とも化した双子のやりとりを苦笑しながらシキは見ている。しばらく睨み合うも相容れないことはわかりきっていたのか、アイがため息をこぼして呟いた。   
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