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いや、正確にはその応酬に驚いて固まったのではなくさっきまで話題に上っていた『サイ』本人に驚いていたわけで。
更に正確に言えば、そのサイの顔に明らかに見覚えがあったわけで。
要するに、髪から洋服そして靴に至るまで、付け加えれば眼鏡のフレームまで、真っ黒のペンキをかぶったんじゃないかと疑ってしまうほど黒一色なその人は明らかに昨日の人物なわけで。
浮き出るように目立つ白い肌も昨日の記憶そのもので。
「シキ、ちゃん……?」
そして、初めて聞いた名前に首を傾げてシキに視線を向けたサイもまた、その姿を認識するや否や固まってしまった。
目を見開いてお互いを見つめ合うその様子は昨日の状態をリピートしているように見える。違う点は、場所が画材店であることと、双子が状況に追いつけていないようにシキとサイを交互に見ていることだった。
「なんだなんだ、どうした二人して」
「あら? もしかしてサイ、シキちゃんと知り合いだったりするの?」
再びあの気まずい空気が流れ始めた瞬間、それを救ったのは空気を読まない双子の言葉だった。
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