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「あ、いや、あのっ」
なんて言えば良いんだ。
お二人の弟さんは、昨日私の絵に口付けを落としていたところで出会いました。なんて自分自身が恥ずかしすぎて口が裂けても言えない。
言葉にならない呻き声にも似たものを口から零すシキとは裏腹に、以外にも対応したのは穏やかな声だった。
「昨日、美術室で偶然会ったんだよ」
ね? と、邪気のない落ち着いた笑顔を向けられるとシキはなんだかほっとして、そのままこくりと頷くことができたのだった。
対して双子は、それを聞くや否や軽く眉を寄せる。タイミングまで完全に一緒で、シキは流石双子だと他人ごとのように考えていた。
「美術室……だと?」
「そうだよ」
「サイ、あんたまさか……」
表情を固くしたまま双子はちらりとシキを見た。視線を動かすタイミングもまた完全に一緒だった。そして再び同じタイミングで視線をサイに戻す。
サイは、なんてことはないかのように穏やかな表情でそれを受け止めた。双子とサイの間で妙な沈黙が流れる。まるで視線で会話するようなそれは、アイがわざとらしく声を上げたことでどうやら終了したらしかった。
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