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それも、自分の絵の中に。
思わず近寄ってまじまじと見つめる。
「おっかしいなあ……ここだけ塗り残したっけ?」
ぼやきにも似た呟きは、色彩に浮かぶ不自然に白い空間の解決にはとうていならなかった。
自分でも特に気に入っていた色合いだから、塗り残すなんて馬鹿なことするはずがないのに。
「……まあいっか、後で塗ろう……」
後々考えれば明らかにおかしい状況も、今の疲れきったシキの頭ではちょっと変なこととしか捉えられない。諦めたようにもう一度だけため息をこぼして、今度こそシキは絵に背を向けた。
足取りも自然と重くなる。
「……そういえば」
やるせない帰宅途中、ふとシキは思い出した。
あの塗り残した部分のこと。
あの白い部分が、なぜが男性が口付けた部分と重なるような気がした。
「――まあ、関係ないか」
どちらにしても塗らなきゃならないことに変わらない。本日何度目かもわからないため息をこぼして、シキは気分を変えようと足を早めたのだった。
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