魔法陣

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 タワーを倒れない様にちょっとずつずらし、ラグは手を伸ばしてソレを取った。 「わぁ…」 それを見たラグの表情が優しい微笑みに変わる。手に持つ物には、ディーカーと一人の女性とラグが微笑んでいる写真だった。ラグと手を繋いでいる女性はアンジェ―ラグの母で、彼女もまた、Meteorの実力者だった。ラグが座った位置から見えていたのは、写真立ての角だったのだ。  数分、ラグは本の事なんか忘れて、その写真をずっと眺めていた。開いていた小さな窓から、ビュウ、と風が入って来た事で我に返り、ラグは写真立てを丁寧に元の場所に戻し、取り出す時以外に触れもしなかったタワーのてっぺんから本を一冊取った。その本の隣に文字テキストの様な、薄っぺらい本を開き、準備万全の状態を作る。 「母さんと父さんが帰って来るまでに、使いこなせる様にしないとなぁ…」 驚かせよう、と心の中で呟くが、ラグはまだどんな魔法かも知らないのだ。少々無謀、というより、無理な話である。  比較的ポジティブ思考なラグがそんな事を考える筈が無く、笑みを浮かべながら分厚い方の本を開き、最初の文章を見る。その瞬間笑みが消え、冷汗が浮き出てきた。 「…基礎から入ろう」 一々調べながらやるよりか、全て覚えてからの方が早いと考えると、テキストの薄く軽い本を持ち、ディーカーの書斎を出た。
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