2.155X年 晩秋 相模国  小田原郊外

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「曽根川じゃないって・・・・・・!?」 俺がまたもおずおず尋ねると、彼女は満面の笑みで、 「・・・・・・今は“北条 ひかる”なんだっ!」 と言って、顔をほんのり赤らめた。 ほ・・・・・・北条!? 俺が間抜け面をしていると、曽根川・・・・・・もとい、北条さんは恥ずかしげに、かつ、自慢げに、 「えへへへ・・・・・・実は“新入社員”として北条家に入って以来、ちょっと頑張りすぎたおかげで北条の殿様に気に入られちゃってさぁ・・・・・・北条の一門衆(一族)の若武者を紹介されちゃって・・・・・・それで、ね・・・・・・」 最後の言葉はよく聞こえなかったが、凛々しい姫武者のイメージがぶち壊しになるぐらいのにやけ顔が、雄弁に結論を物語っていた。 てことは・・・・・・ 「だ・か・ら! こーみえてもボク、“人妻”なんだからねっ! だから巽クン! 惚れても無・駄・だ・ゾ!」 いや、その。 惚れたなんて一言も言ってないから。 ・・・・・・惚れそうになったけどさ。
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