7.155X年 晩秋 相模国  大船近郊

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「・・・・・・スターリングエンジン!?」 俺が“オート三輪のようなもの”について、思いついたことを言ったところ、ひかるさんが素っ頓狂な声を上げた。 無理も無い。 ガソリンエンジンやディーゼルエンジンよりも早くに発明されながら、一時は表舞台から消えていたエンジンだ。 21世紀になり、エコエコやかましくなったあたりに、「燃料を選ばず、効率の高いクリーンなエンジン」として注目を集めたが、燃料電池などに押されて再び歴史の彼方に消え去ってしまった。 その原理は非常に簡単で、要は空気の膨張と収縮を利用してピストンを動かし、動力を得るというものである。 ゆえに空気を膨張させるだけの熱さえ得られれば熱源はなんでもよく、また構造も簡単なため、動力源として廃れた後も、科学実験用にはさかんに用いられてきた。 俺が以前見たとあるサイトには、空き缶で作れるスターリングエンジンというものが掲載され、その構造の簡便さに大いに感銘を受けたものである。 おそらく宇都宮の“新入社員”玲菜もまた、その類のサイトを見たことを思い出し、鉄砲鍛冶か鉄瓶職人にでも簡便なスターリングエンジンを作らせ、それを動力源とした“オート三輪のようなもの”を作り上げたのだろう。
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