ナツカゼキャノンボール！

プロローグ

西暦2090年――。
2000年からちょうど90年が過ぎ、科学技術の躍進と共に人口増加が深刻化してきた近年。
人類は2020年から進めていた巨大コロニー建造計画の建造を2070年に完成させて、今ではおよそ20億人ほどが暮らしている。
そのうち日本は巨大コロニー・通称「シャングリラ」の中のセクター7を「日本の区画」として与えられ、5つの都市が作られた。
そして宇宙開発によってもたらされた恩恵があった。それがエキゾチック物質の発見だ。
エキゾチック物質とは負の重力を持つ物質のこと。いわゆる反重力というやつで。
これが乗り物や飛行機などに応用できれば人類は二酸化炭素排出の問題などからおさらばできるかもしれない。
その研究過程として作られた宙に浮くスケートボード「グライディングボード」。ここ数年でその独特なスピード感と浮遊感が若者に人気を博し、「エアリアル」と名づけられたそれはコロニー発祥の名物スポーツとなった。
今ではプロリーグまでできるほど競技の種類と競技人口が増えてきている。
これはそんな近未来を生きる少女たちのある夏の記録である。