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「おまえの直球はジャイロボールかもしれない」
何だって!?
今まで気付かなかった・・・・・・けど、あの『感覚』が、それに結び付いているかもしれない。
「問題は、そこじゃない。おまえの直球は軽くなっている。最初に比べて重くもない。キレも落ちている。ただ速くなっただけだ」
重大な事実を突き付けられた。投手にとって直球は全ての変化球を活かす重要な変化球。もし、直球が悪くなると同時にスライダーや、カーブなどの変化球も本来の調子を発揮しない。
それくらい重要というのは、中学の時から分かっていたはずなのに・・・・・・。
呆然と立ち尽くしていた俺を先輩は、背中を押した。
「大丈夫だ。俺らがなんとかしてやる」
『俺ら』?
「あっ、言ってなかったっけ? おまえだけじゃないんだぜ。ピッチャーは」
シート打撃をしていた奴の事か?
「今は、寮にいるぜ。 ケガしてんだ、あいつ」
そうなのか・・・・・・。
じゃあ、あいつは一体・・・・・・。
「じゃあ、今からあいつを呼ぶか。時間も無いし」
残り2時間2分。時間は、余り残っていなかった。
「先輩、数日前シート打撃のピッチャーしていた人って誰ですか? 背番号『1』の・・・・・・」
「あぁ、あいつか。何故か試合に出たがらないし、練習も来ない。シート打撃の日だけ来るんだ」
「何で背番号『1』なんすか?」
「去年エースに抜擢されたんだが、自らエースの番号を返しに行った。でもキャプテンは、また戻ってくる事を信じて受け取らなかった。そして今はエースが二人いる」
二人のエースか・・・・・・。
あの左腕の実力は本物。でも彼に何があったのだろうかは分からなかった。
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