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「黙れ」
「・・・・・・」
後方の奴は一蹴されたようだった。
実に、二時間くらいだろうか、そのくらいで学校案内は終わった。
そのあとは、教室に戻り、色々と持ち帰らなければならない物や、自己紹介という入学式終了後の豊富なバリエーションが待っている。
この全てをかい摘まんでもいいから、早く家に帰してくれないのだろうか?
「それでは自己紹介を始める。出席番号順に」
着々と自己紹介は行われている。ただ、皆の自己紹介は、『名前+よろしく』という方程式が成り立っている。
「津川亮佑、よろしく」
考えている内に番が来ていた。何も思い浮かぶ物は無かった。
「辻沢久志、よろしく」
辻沢もあの方程式が成り立った。逆に言えば皆、早く帰りたいだけなのだろう。でも形は・・・・・・という事だろう。
そしてテキトーな事を考えていると、誰かが話し掛けてきた。
「お前、双木中の出身だろ?」
小声で、辻沢の隣に座っている男子が、話し掛けてきた。
何故、俺が双木中学校の卒業生という事を知っているのだろうか。「スパイだろ?」
「いや、質問と回答が成立しないのは何故か聞きたいところだが、そうなんだろ?」
「まあ、そうだけど。お前もか?」
「俺は双葉中学校だ。お前とは戦った事があるぞ」
「練習試合か?」
「いや、公式戦だ」
どうやら、あいつのことだ。遠藤恭平を中心に投手力の高い、あの中学。双葉出身の抑え投手の黒澤だ。
「守護神の黒澤か!?」
「あぁ、もちろん覚えているさ。辻沢!」
なるほど、強敵が右隣に居たとは知らなかった。公式戦の双葉とは三対零で負けた。悔しい思い出が蘇ってきたところ自己紹介は終わった「解散」
二文字でホームルームは終わり、皆は帰る支度をしていた。俺はまだ帰るつもりではない。野球部を見学しに行くつもりだ。
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