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辻沢は、計三十球程であったが、18.44メートル先のミットに放った。
しかし、ミットに目掛けたはずのボールは、大きく逸れるばかり。指で数えられる程の球しか、ミットを動かす事なく辿り着いていない。
「まあまあのストレートだな。変化球は、たいしたことない」
持てる全てをぶつけても、今のレベルは、最低辺クラス。そのおかげなのか、心の底から燃え上がる何かがあった。
「まあ、一年生にして直球は良いんじゃないかな? 変化球は全然駄目だけど」
悔しい。それ以外の感情は、今、どこにも存在しない。
「あっ 言い忘れてた うちの高校、監督いねーから。それと、自由に練習ができるからな」先輩が振り向き様に言った。
何にせよ練習しないと生き残れないという事か。
監督が居ないという事は先生がランダムに練習を見に来るのか・・・・・・。細かいことは、すぐに頭の隅へと追いやった。
辻沢は一度、グラウンド、学校、外にある道路という順に見渡した。特に気になる場所も無く、ただ皆の鞄が乱雑に倉庫の隣に置かれているのを見た。
ジャージには着替えている。まだ時間もある。することは一つだ。
「辻沢、そこにある大量にあるボールを運んできてくれ」
「はい」
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