76人が本棚に入れています
本棚に追加
──魔王side
社交パーティーと聞いて思い浮かぶのは華やかなパーティーだろうが私にはそんなことよりずっと先に思い出されるものがある
それは13年前に遡る
数多く存在する兄弟の中から私は魔王に選ばれた黒色の髪と赤い瞳‥禍々しい魔力
私が欲して手に入れたものではない‥私は魔王なんて望んで居なかった‥
人との関わりも苦手な上に何より騒がしい所は好きではなかった
だから魔王なんて辞めてしまいたかった‥
だがそんな私の考えを変える出来事が起きた‥
それは魔王に就任する祭典の日‥
祭典の前に私の父は吸血鬼の一族の長、クラウス家の者と挨拶を交わしていた
仲良く世間話を交わしている父達を横目で見ながらも私は感傷に浸っていた‥
そんな時一人の女性が小さな子供を追ってやってきたのだ‥
その子供はクラウス家の長を見るなりその小さな身体でクラウス家の長の脚へとしがみついた
それを見るなり長は苦笑いし
父は微笑ましそうに微笑んだ
「こんばんは‥魔王様‥お邪魔してしまいすみません‥」
眉を下げて笑いながらもその女性は父へと告げた父は気にすることはないと言って子供の頭を撫でた
頭を撫でられた子供はと言うと嬉しそうに笑ってそして不意に私の方へとその大きくつぶらな瞳を向けてきた
そしてまだうまく呂律の回らない‥だが澄んだ声で私に話しかけてきた
『おにーちゃん‥が次の魔王しゃま‥?』
軽く首を傾げこちらを見てくる姿は何とも愛らしい
何より細くそして綺麗な金色の髪に、まるで青空を集めて結晶化したかのような青い瞳‥
柄にもなくその容姿と柔らかくだがどこか力強い魔力に私は魅入られてしまった
「魔王様‥次代様はどうやらルイのことを気に入ったようですし二人きりにしましょうか‥」
「そうだな‥ルイ君、ユリウスをよろしく頼んだよ」
そんな様子を見ては父達は部屋から出て行ってしまった
ルイと呼ばれた子供を置いて。
+
最初のコメントを投稿しよう!