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二人きりになった私たちの間には暫くは何の会話もなかった
だがルイは私の方へと近寄ってくるとその膝へと座り抱きついてきた
子供だから甘えたかったのだろうかと思って顔をのぞき込んでみたらなぜか心配そうな顔‥
「どうした?親が恋しいか?」
あわてる私の言葉を聞いてルイは否定の意を込めて首を振る
『違うの‥お兄ちゃん‥‥つらそうだったから‥』
“辛そう‥‥?”
私は顔色を変えては居ないしいつも通りにやっているはずだ
なのに目の前のルイは‥俺の心底にある感情を感じたらしい‥
───この子なら俺の痛みを分かってくれるだろうか‥‥
私はいつもの無表情をやめて困ったように笑いかけた
「私は‥魔王になどなりたくない‥」
そういうなりルイは更に心配げな表情になり私の腹部へと強く抱きついた
『どうして?お兄ちゃんはこんなに優しくて強いのに‥?』
“どうして?”
明確に理由を聞かれたのは初めてだ‥
このような弱音を吐くと母上も父親も私を説教し始める‥‥
魔王がそのように弱くて良いわけがない‥と
だが私には理由は答えられなかった‥考えてみると理由などなかったのかもしれない
ただ不安なだけで‥
「わからない‥だが不安なのかもしれない‥魔王になることが‥」
するとルイは納得したように頷きそして花が咲いたような華麗な笑顔を見せた
『大丈夫だよ‥お兄ちゃんなら優しくて強い魔王しゃまに成れるから‥‥俺はお兄ちゃん以外魔王しゃまが勤まる人はいないと思うよ‥?』
ルイは不思議な少年だ
私の痛みを理解してしまうなんて‥
私は少年の頭をなでるとそっとその壊れそうな小さく細い体を抱きしめた
「ありがとう‥ルイ」
耳元でそう囁いたあと‥
心の中ではこう呟いた
───必ず君を私の傍に‥
‥と
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