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それからの一連の流れは速かった‥
魔王ユリウスの手で抱き抱えられたと思ったらいつの間にか寝室にいて
まるで俺は壊れ物のようにベッドにそっと寝かされた
「抵抗しないのか‥ルイ‥?」
ユリウスは俺に覆い被さるとどこか嬉しそうにそう問いかけてくる‥
おかしい‥
普段の俺なら抱き締められた所ですでに抵抗してるはずなのに‥抵抗すらできない‥
まさか‥
『っ‥勝手に呪文なんてかけるからだ‥』
そんな言葉を聞くなりユリウスは目を見開く‥だがすぐに元の嬉しそうな表情へと戻った
俺は信じては居なかったが魔王の血筋の者は心から欲する者が現れた時‥その声‥その瞳だけでその者を手に入れてしまうという噂があった‥
さらにその呪文に掛かるのは魔王の傍らに立つに相応しい者だけで‥魔王は無意識に呪文に掛けてしまうらしいというから‥
俺は避けることも逃げることもできない‥
蜘蛛と蝶の攻防戦の如く
捕まれば逃げられない‥
───嗚呼、いっそこのまま受け入れてしまおう‥
そう呟いたのは、呪文に犯された意識の表層か‥それとも虚ろげなる意識の深層か‥
俺は近付いてくるユリウスの顔に‥あらがうこともなく瞳を閉じた
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