Chapter1

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 四月、中学を卒業して早くも一ヶ月だった頃、一応人並みに勉強はできてたから、普通の公立高校に入学が決まっていた。  そしてその日は、高校の入学式だった。しかし、俺こと高崎優也(タカザキユウヤ)は目覚まし鳴らしながら布団に潜っていた。  カーンカーンカーンカーン……  鍋を何かで叩く様な音がする。こんな事するのはあいつしかいねぇ 「お兄ちゃぁん、早く起きてくださぁい。」  カーンカーンカーン…… 「咲那ぁ、うるせぇぞ! 」  俺は、一階の居間にいるであろう妹を怒鳴り付けた。すると今度はドタドタと階段を上がる足音がする。  ガラガラッ!  「もぉ! 早く起きてくださいよぉ! 」  ドアの前には俺の妹、高崎咲那(タカザキサキナ)が立っていた。エプロンを着けているところから、朝飯を作っているのであろう。だがなぜ左手に鍋、右手におたまを持っているのかが分からん。 「はぁ……入学式は午後からだから朝は寝るって昨日言ったろ? 」 そう、その日は高校の入学式だが、上級生は始業式が午前にあるため、入学式は必然的に午後になるのだ。 「だって、そうしたらわたしがお兄ちゃんとお話できないじゃない……」  ……は?   と、普通の人なら考えると思うが、長年咲那と二人で暮らしていると慣れちまった。  二人って言うのはそのままの意味だ。両親はいねぇ。二人とも俺が十歳の時、事故で逝っちまった。それからずっと二人で暮らしている。今までは親の残した遺産だのなんだのでなんとかなったが、これからのことを考えると、やっぱりバイトでもした方が…… 「お兄ちゃん、どうしたんですか? 急に考え事した様な顔して、かっこいいですよ? 」  最後の一言おかしいだろ。まぁこんな事にも慣れちまったが。 「それじゃ着替えて降りてきて下さいね。朝ごはんはもうできてますから。早く来ないと冷めちゃいますよ。」  そう言って咲那は部屋から出ていった。  とりあえず体を布団から出すことにする。時計を見ると七時半、入学式が十二時半からだからジャスト五時間。 「かったりぃ……」  そうぼやきつつ着替えることにする。起きたからには着替えておきたいからな。
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