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着替えを手っ取り早く済ませ一階に降りるとうまそうな匂いがしてきた。
「お兄ちゃん、遅いですよぉ。」
そこには、制服姿の咲那が立っていた。そういえば中学も今日は始業式だったな。咲那は中学二年だから始業式には出席しなければならない立場だ。
「わたしもう学校行くので、ここのご飯食べてて下さいね。」
咲那は委員会やらなんやらで早く行かないといけないらしい。ご苦労なこった。
「あぁ行ってらっしゃい」
ふらふらと手を振って見送ることにする。
「はい、行ってきまぁす。」
意気揚々とドアを開けて行こうとするが、
ごんっ!
ドアに頭をぶつけたような音がした。いや、実際ドアに頭をぶつけた奴がいる。
……咲那、ドア開ける前に鍵ぐらい確認しろよ……
「うぅ、痛いですぅ」
頭をおさえながらぺたりと座り込む咲那。そりゃああんな良い音なったもんな。痛いに決まっているであろう。
「はぁ、大丈夫かぁ? 」
頭をおさえる咲那の方に歩み寄る。
「はい、大丈夫です……それより、カッコ悪いところ見せてしまいました。」
どうやら外部は問題無いようだ。内部はまぁ……問題だらけだろうが大丈夫だろう。
「カッコ悪いって、そんぐらいの方が可愛いと思うぞ? 」
俺がそう言うと咲那は目を輝かせてこっちを向いていた。なんだ?
「そうですか! つまりお兄ちゃんはドアに頭をぶつける女の子に好意を抱くんですね? 」
……何でそうなる? 普通ドジっ娘とか天然とかだろ? 何だよ、ドアに頭をぶつける女の子って。
「馬鹿なこと行ってないで早く行け。遅刻したらうるさいんじゃねぇのか? 」
たしか中学はそこのところの規則はうるさいはずだ。
「あっ、そうですね。それでは改めて、行ってきます。」
今度はちゃんと鍵を開けて行ったな。頭をぶつけたような音はしなかった。
「あぁ、行ってらっしゃい。」
手をふらふらと振って見送ることにする。なんで玄関で頭打つような奴が委員会やってるんだ? よくわからん。
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