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「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした。」
何も変わったこともなく晩飯の時間は終わった。
後片付けをしてる時にずっと気になっていたことを訊いてみた。
「なぁ紫、親御さんは?」
訊くの遅いだろ! と言いたくなるだろうが堪えてくれ。
「あぁ、その……今は、居ないんです。」
少しうつむきながら、紫がそう答えた。ヤバい、地雷踏んだか?
「そっか……ゴメン。」
俺が謝ると、紫は顔を上げて、
「優也さん。もしかして、勝手に人の両親を殺してませんか?」
……? 違うのか?
「違いますよ! 会社の都合で、各地を転々としてるだけです。
……そのせいでずっと家に居ないので、優也さんの想像通り、わたしの中では死んだも同然なんですけどね。」
そうか。紫も俺とほとんど同じように育ってきたんだな。
いや、違う。俺には咲那や隼人という支えがいた。だけど、紫にはそんな支えがいない。
支えがあった俺でもあんなだったんだ。支えのなかった紫はどうだったのか?
辛かっただろう、寂しかっただろう。悲しかっただろう、孤独だっただろう。こんな小さな身体でよく耐えれたな。
「ちょっ、ちょっと優也さん?」
知らず知らずのうちに、俺は紫を抱き締めていた。不思議と言うべき言葉もスラスラ出てきた。
「甘えてもいいんだぞ?」
「えっ?」
目を大きく見開いて、紫が聞き返してきた。
「一人でよく頑張ったな。これからは甘えたっていいんだぜ?」
「けど、そうしたら優也さんにいっぱい迷惑かけちゃいます……」
「だから、いいんだって。紫は色々背負い込み過ぎだ。俺にも少し分けろ。料理以外なら力になれるから。」
俺がそう言うと、紫はポロポロと涙をこぼしていた。
「あれ? 嬉しい……はずなのに……どうして……涙なんて……」
「いいんだよ、泣きたい時に泣いて。それで、笑いたい時に笑えばいいんだから。」
俺がそう言うと、紫は何かが切れたかのように大声で泣き出した。
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