Chapter6

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「ご馳走様でした。」 「お粗末様でした。」  何も変わったこともなく晩飯の時間は終わった。  後片付けをしてる時にずっと気になっていたことを訊いてみた。 「なぁ紫、親御さんは?」  訊くの遅いだろ! と言いたくなるだろうが堪えてくれ。 「あぁ、その……今は、居ないんです。」  少しうつむきながら、紫がそう答えた。ヤバい、地雷踏んだか? 「そっか……ゴメン。」  俺が謝ると、紫は顔を上げて、 「優也さん。もしかして、勝手に人の両親を殺してませんか?」  ……? 違うのか? 「違いますよ! 会社の都合で、各地を転々としてるだけです。 ……そのせいでずっと家に居ないので、優也さんの想像通り、わたしの中では死んだも同然なんですけどね。」  そうか。紫も俺とほとんど同じように育ってきたんだな。  いや、違う。俺には咲那や隼人という支えがいた。だけど、紫にはそんな支えがいない。  支えがあった俺でもあんなだったんだ。支えのなかった紫はどうだったのか?  辛かっただろう、寂しかっただろう。悲しかっただろう、孤独だっただろう。こんな小さな身体でよく耐えれたな。 「ちょっ、ちょっと優也さん?」  知らず知らずのうちに、俺は紫を抱き締めていた。不思議と言うべき言葉もスラスラ出てきた。 「甘えてもいいんだぞ?」 「えっ?」  目を大きく見開いて、紫が聞き返してきた。 「一人でよく頑張ったな。これからは甘えたっていいんだぜ?」 「けど、そうしたら優也さんにいっぱい迷惑かけちゃいます……」 「だから、いいんだって。紫は色々背負い込み過ぎだ。俺にも少し分けろ。料理以外なら力になれるから。」  俺がそう言うと、紫はポロポロと涙をこぼしていた。 「あれ? 嬉しい……はずなのに……どうして……涙なんて……」 「いいんだよ、泣きたい時に泣いて。それで、笑いたい時に笑えばいいんだから。」  俺がそう言うと、紫は何かが切れたかのように大声で泣き出した。
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