Chapter6

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「悪いな、長居しちまって。」  時刻は午後八時。外はすでに真っ暗だ。  俺個人としては、もう少し紫と一緒に居たかったが、そろそろ咲那も帰ってきてるだろう。あいつを一人で家においておくのは、色んな意味で怖いからな。 「こんな家でよかったら、また来てください。」  紫は微笑みながらそう言った。言われなくてもそうするよ。 「じゃあ、また明日学校で。」  そう言って家に帰ろうとしたとき、 「あっ、ちょっと待ってください。」  後ろから紫が声をかけてきた。 「ん? 忘れ───」  物でもあったか? と言おうと思ったが、口を何か柔らかいもので塞がれて言えなかった。  それが紫の唇だと気づくのに数秒、その行為がキスだと気づくのにさらに数秒かかってしまった。 「フフ、ファーストキス、捧げちゃいました。」  ちょっと顔を赤らめてそう言った紫。 「お、俺だって初めてだよ……」  でも、よかった。ファーストキスを紫に捧げれて。 「ありがとうございます。これも霧崎さんのおかげです。」  ……何でここで隼人の名が出てくるんだ? 「霧崎さんなんですよ。いろいろとわたしにアドバイスくださったの。」  ……あいつ……俺だけじゃなくて紫にも……何だかんだ言っても、やっぱり最高の親友だぜ、あいつは。 「そっか、なら帰ったらお礼のメールでもしとくか。 それじゃ、また明日。」 「そうですね、また明日。」  そう言い残し、名残惜しいが高坂家をあとにした。  空は曇り。嬉しさが圧倒的に多かったが、何だか嫌な予感がした。
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