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もう何分走ったかわからない。まだ数十秒なのかもしれないし、もう何時間も走ってるかもしれない。
走りながら、俺はこれまでのことを携帯のフリーメモの欄に記した。
メールを送りたかったが、咲那がこの携帯を解約したのだろう、ずっと圏外だ。
「はぁ……はぁ……これで……よし……」
相当なスピードで走っていたのだろう、足は痛いし、肺は悲鳴をあげている。知ったことか、捕まるわけにはいかねぇんだ。
メモを記した携帯を、そこらの家に投げ入れる。誰でもいい、これを読んで咲那を止めてくれ。
「やっと見つけたよ、お兄ちゃん。」
あぁ……どうやら地獄から来た死神に連れていかれるらしい。俺はここで死ぬのか?
「お兄ちゃんは死なないよ。だってお兄ちゃんはずーっとわたしの『モノ』だもん。」
『モノ』? 俺は咲那の『モノ』?
「ずっと、ずーっと、わたしが愛してあげるからね。お兄ちゃん。……ウフ、フフフ、アハハハハ!」
咲那に抱かれたところで俺の思考は途切れた。まるでテレビを切ったかのように。
これが咲那の『愛』? 歪んでやがるぜ……
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