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《5月10日_PM12:25》
昼休みということもあり、廊下には多くの生徒達が行き交っている。
そんな中を、早足で駆け抜けて行く一人の女子の姿がある。
魅惑の巨乳娘―――佐々木遥は、異常なほど緊張していた。
(じ、時間経つの早いよ!まだ心の準備できてないし!)
決意を持って登校はしたが、時間が経過するにつれ、遥は緊張が抑え切れなかったのだ。
それでも遥の足は、自らの身体を中庭へと真っ直ぐに運んでいく。
(…そうだよ、決めたんだ。今日は逃げない、絶対に)
決意を新たに固めたところで、遥は『新山と友達になるぞ大作戦』を見直す。
(みんなからの助言をまとめたら、無理矢理にでもココアの話題を持ち出せば完璧らしいケド…)
遥は不安に思っているが、雄太と親しい人間には分かる。
それが、全く隙の無い超完璧な作戦であると。
しかし、その事は遥も理解できていた。
遥が相談をした相手には、雄太と同じクラスの女子もいる。
勿論、雄太と友達程度の関わりはあるそうだ。
雄太と会話した事も無い自分なんかより、よっぽど信頼できる相手。
そもそも、スタートラインに立ってすらいない自分と比べる事自体が間違いだと、遥は自覚している。
(…でも、やっぱり悔しかった)
自分が得た客観的事実の新山雄太より、友達の話す新山雄太の方が、ずっと現実味があった。
(悔しいから、今日は諦めないよ)
今度ばかりは、自分の五感全てで新山雄太という人間を感じる。
次々と固まっていく決意のおかげで、遥の心には、緊張も恐れも存在しなくなっていた。
もうすぐ、中庭のベンチに座る神様が見えてくる。
校舎から眺めるだけの毎日には、終わりを告げるのだ。
新山雄太の姿が見えた事で少し緊張が戻るが、今の遥は冷静なまま。
しっかりと作戦を頭に思い浮かべ、また一つ歩みを進めた瞬間―――
遥の頭から、作戦の内容が一切合切吹き飛んだ。
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