第三章

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《5月10日_PM12:30》 もはや自分の領地と化した中庭で、中庭様こと新山雄太は絶体絶命のピンチを迎えていた。 「私、中庭先輩のこと、入学した時からずっと校舎で見てました…。そしたら、いつの間にか好きになってて…。 だから私と…、付き合って下さい!」 (…ま、…マジかよ) 女子からの告白シーンでピンチという表現は変だが、雄太の視点からすれば大正解だ。 実際、雄太の背中には、滝のような冷や汗がダムの放水のように流れていた。 普段祈られる立場であり、慣れない告白をされたから雄太は戸惑っているワケではない。 雄太も青春真っ盛りの青少年。 女子から告白される、という素敵イベントに喜びを感じないハズがない。 そう、相手が普通の女子ならば――― 「いや…その~ですね?俺達はお互いの事を何も知らないワケでありまして…、いきなり告白をされても困るというか迷惑というか…」 「大丈夫です!付き合ってから始まる恋もあります!」 軽く断られているのだが、それに気付く様子も無く積極的に雄太へ詰め寄る女子。 「あ~、ちょっと近いよ、うん。もっと距離を離してくれないと死んじゃう、確実に、うん」 雄太は告白の返事に迷っているから、曖昧に流しているワケではない。 そう、告白された相手がこの女子でなければ、しっかりとした返事ができるのだ。 この―――超ふくよかで厚化粧でない女子だったなら。 (くそっ!初めて女子に告白された素晴らしい記念なのに、何で…こんな奴なんだ…ッ!) 素敵イベントの夢を木っ端みじんに打ち砕かれ、雄太の心は折れてしまいそうだ。 そんな雄太の苦悩など関係無いとばかりに、デブ女は結論を求める。 「どうですかオーケーですかオーケーですよね?」 「は…ははは…」 青春時代の終了を覚悟し始めた雄太だが、ここで思わぬ救いの手が――― 「やめなよ!」
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