天使の育て方1

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
朝 優しい光が窓から入り込む 自分の身体を確かめて、今日も無性と気付く ああ、母様に何て言われるか 給仕がやってきて、朝食の準備を始める 食べたくない 一口だけスープをすすって、眠りに堕ちる 今日も小言を言われるんだもの、もう少し眠らせて 給仕は何も言わずにさがる 入れ違いに、母様が部屋にやってきた 「今日も食事を摂らなかったということは、今日も無性なのですね」 始まってしまった オトナになれ 性を決めろ 早く 早く そんなこと言われても、なろうと思ってオトナになったり男になったりできるわけがない 今日の母様の処方箋は、コイ 医者に相談したら、オトナになるにはコイが必要だと言われたとか どうせご飯食べなかったから、とか言われて、コイ料理がやってくる もうそろそろ疲れた 「早くオトナになってくれないと、あなたに価値なんてないのですから」 今のままじゃいられない けれどオトナにはなれない だったらもう、いなくなれば良い 「いっぱい食べて、早く大きくなるんですよ」 いつだっけ、もっともっと小さかったとき、優しい母様が言ったっけ オトナになれない子はいらないんだ だったらもう、なにもかもやめてしまえばいい ねえ、次は、早くオトナになれる子を、貰いなよ そう思いながら目を閉じる しばらく起きないでいよう うまくいけば、餓死できるはず
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!