星に願いを

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 私立S学園。自由・自治・自律をモットーにしたこの学園でも、他の学校と同じように期末テストが終わった所だ。  門番と言う心強い先生のおかげでかなり助かったのだけれど、何せ期末テストと言うと九科目もあって勉強が大変だったには違いない。テスト十日前から、三月ウサギと二人で机に向かい、びしばししごいてもらったのだ。  ここ数日の集中力もすっかり切れたあたしは、少しぼんやりしながら部室へと向かっていたのだけれど 「つ、疲れたぁ…っ」  いつもなら気にならないのだけれど、今日は部室のあるクラブハウスを、三階まで登るのが結構キツい。後ろからやって来たチェシャ猫が、あたしの肩をポンッと叩き 「テスト、お疲れ。先行くよ、アリス」 と、あたしを追い越して行った。 「あー、もう。遠いなぁ」  あたしがいる場所は、まだ二階。あと半分ある。文句をこぼしながら、まだまだ続く階段を見上げた時だった。ザワザワザワッと、得体の知れない音が下から登ってくるのが聞こえたのは。 「な…っ、何?!」  あたしは目を丸くして振り向いたのだけれど、何がやって来るのかは見えない。ただザワッ、ザザザッと妙な音が登ってくるだけだ。 (怖い…!)  なんだかよく分からないけど怖い。あたしはその音に押されるようにして、階段を駆け上った。すると、その音が追いかけてくる。 「何?!なんなのよ…っ」  ゼーハー言いながら階段を登りきったところで、バッと振り返る。すると、そこには緑色の巨大なお化け…ではなく、大きな笹を引きずった三月ウサギがいた。 「三月ウサギ!どうしたの、それ」  驚いて目を丸くすると、三月ウサギはニッと笑みを広げ 「七夕だから、近所でもらって来たんだよ」 と言う。確かによくよく考えれば、今日は七月七日、七夕だ。
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