猫とコルセット

2/54
2966人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
 私立S学園。中高、大学までエスカレータ式のこの学校は、自由・自治・自律をモットーにした学園だ。  生徒数に比例して部活数はかなり多く、体育祭や学園祭のイベントともなると、かなりの盛り上がりを見せるのだが、それとは別に何ヶ月に一度か、クラブハウスイベントと呼ばれるものが行われることがあった。  体育祭や学園祭の、学園全体が関る行事のしきり役は生徒会だ。だが、クラブハウスイベントのしきり役には、それ専門のイベント部というものが存在していた。  クラブハウスイベントと言うのは、文化部の部室が集まるクラブハウス内だけで行われるイベントのことで、ハロウィーンやクリスマスの時期にはクラブハウス全体が飾りつけされ、仮装やパーティーを楽しむことで、部同士の交流を図ろうというものだ。  イベント部は部員数は少ないが、何気にやり手が集まっていて、時々なんだか妙なイベントを企画してはクラブハウスの前でチラシを配っていたりするのだが、そのチラシを一番最初にもらって来たのは、三月ウサギだった。  不思議の国クラブ部室で、オレはダイナとじゃれていた。ダイナとは気が合う。ベタベタ甘えて来たりはしないけど、たまに気が向くと、悪戯を仕掛ける可愛いヤツだ。  オレがダイナと猫じゃらしで遊んでいると、部室のドアを開けて、三月ウサギがやって来た。彼は部屋に入ってくるなり 「なぁなぁ、またイベント部が、こんなもん配ってたんだけど」  そう言って、たまたまそこにいたドードーの前に一枚のチラシを出した。 「何、これ?」  ドードーがひょい、と眉を上げる。だが、さらりとそれに目を通したかと思うと、彼女は 「アタシはパス。こういうのは女王が好きなんじゃない?」 とひらひらと手を振った。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!