猫とコルセット

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(何か面白いコト、ないかな)  そんなことを思って部室を見回すと、面白いコトはすぐに見付かった。  テーブルに向かって、アリスが何かを作っていた。 「アリス、何してンの?」  オレが立ち上がって声をかけると、アリスはバッとテーブルにあったものを隠し 「え、ううん!何でもないの」 と言う。分かりやすい反応だ。オレは、口元にニィと笑みを浮かべた。 「何でもないなら、何で隠すワケ?」 「か、隠してないってば」 「隠してる」 「隠してない!」  アリスはむきになって言い返して来た。思わず、クスリと笑ってしまう。 「何で笑うのよ」  彼女が上目遣いに、オレをにらむ。 「だって、むきになっちゃって可愛い」  オレが素直にそう言うと、彼女は分かりやすく顔を赤くして 「…っ 三月ウサギみたいなこと、言わないで!」 と頬をふくらませた。 「そういう顔すると、子どもみたい」  可笑しくて、オレは吹き出してしまった。  彼女はオレを飽きさせない。表情がころころ変わる。  オレはアリスのまん前に座り、小さく首を傾げた。 「ね、それで何隠してンの?」 「だから…別に隠してないってば」  アリスは、腕の下に何か本のようなものを敷いているのに、頑固にそう言い張った。 「ふぅん…オレに言えないくらい、恥ずかしいモノ?」  そう言って語尾を跳ね上げると、彼女はぶんぶんと首を横に振った。 「違うってば、そういうものじゃなくて」 「アリスの恥ずかしいモノって、何?」  内緒話をするかのように顔を近づけ、こそこそと囁くように言って見せた。アリスの顔が真っ赤だ。 「~~…っ!」  何か文句を言いたそうにしているが、言葉が出てこないらしい。  アリスをからかうのは面白い。可愛いし、いじりがいがある。もっと、もっとイジメたくなる。  その時、ちらりと視界の端に、門番が映った。 (門番のヤツ)  こっちを気にしているらしい。本を読んでいるように見えるけど、目が落ち着かない。いつもクールで冷静な門番があわてるなんて、滅多に見られないものだ。
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