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(門番があんな顔見せるようになるなんて、な)
「やっぱり、アリスは面白い」
オレがそう声に出して言うと
「へ…?」
彼女は身を起こし、ちょっと間の抜けた顔でオレを見た。彼女がボーっとしている隙に、彼女がさっきまで必死に隠していた本のようなものを、ひょいっと取り上げる。
「アルバム?」
写真用のアルバムらしい。
「あ、待っ…ダメ!」
アリスがハッとしたように手を伸ばしてきたが、オレは動体視力と瞬発力には自信がある。サッと彼女の手を避けた。
「何、アリスの恥ずかしい写真でも貼ってあるの?」
そう言って、ペラペラと内側をめくってみた。すると、何のことはない。
「なんだ。この前の七夕の時の写真じゃん」
中華服を着た部員や、あの時屋上に集まった生徒の写真がアルバムに綺麗に貼られていた。別にどうってことのない、普通の写真に見える。でも
「う…うん、そうなんだけど」
と、どうもアリスは挙動不審だ。
「なぁんか、怪しいなぁ」
よくよく見れば、写真の上に何か番号が付いている。
「ん…?」
ページを次々にめくって見ると、なんだか嫌な予感がした。
オレはあの七夕の晩、色々とあって女物の中華服を着せられていた。絶対にオレだと分からないように、ヴィジュアル系のバンドを組んでいる軽音部の知り合いに、ばっちり化粧までしてもらって、写真には絶対に写らないようにしていたはずだ。
それなのに、このアルバムに貼られている写真を見ていると、なんだか普通にピースして笑っている女子生徒の後ろに、さりげなくオレの後ろ姿や横顔が映っていたりする。
しかもページをめくればめくるほど、少しずつオレにカメラが寄って来ているような気がする。
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