猫とコルセット

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「アリス、ちょっと説明してもらおうか」  オレは無理矢理笑みを作って、彼女を横目に睨んでやった。 「えーと、あの、それは…」  アリスがあからさまに目を逸らし、がたりと席を立つ。 「逃がさないかンな…」  オレも合わせて席を立った。狩猟でもしてる気分だ。オレが猫科の肉食獣で、アリスは美味しい獲物。  テーブルの上で、アリスがアルバムを持とうとそろそろと手を伸ばしていたが、オレのが早かった。証拠を持って逃げられないように、片手にアルバムを持って、テーブルを迂回するようにじりじりと彼女を追い詰めた。 「いや、それには深いワケがあって…っ 帽子屋!」  アリスは不意にそう言うと、オレにバッと背中を向け、ティーテーブルにいた帽子屋サンの元へと駆け出した。 「あ、逃げンなよ!」  オレはアリスを追ったが、その頃には、彼女は帽子屋サンの背中に隠れていた。帽子屋サンは、ティーカップを持ち上げながら 「何をやってる、騒がしい」 と不機嫌そうに眉を寄せた。いちいち迫力がある人だ。  オレは一瞬ひるみそうになったが 「これ、説明してもらおーか」 と、目の前に証拠となるアルバムを突きつけてやった。  アリスはふるふると首を横に振り 「あたしじゃないんだってば…!帽子屋がやれって言ったのよ」 と言う。 「帽子屋サン?」  オレが首を傾げると、帽子屋サンはすっとぼけて、眉をひょいと上げた。 「写真くらいいいじゃないか。魂を吸い取られるわけじゃあるまいし」 「オレ、写真には写らないようにカメラは避けてたはずなのに、こんなのいつ撮ったンだよ」  オレが問い詰めると、アリスがこそっと 「帽子屋ったら、誰かから借りたカメラで、白ウサギに隠し撮りさせたのよ」 と教えてくれた。 「隠し撮りィ?っていうか、白ウサギも共犯かよ」  オレが後ろにいた白ウサギを睨むと、彼はハッとしたようにオレを見た後 「や、でもそれを言うなら、女王様だって共犯ですよ…っ カメラ借りてきたの、女王様ですからね」 と言う。 「なんだよ、女王サマまで共犯か」  が、肝心の女王サマは鼻歌混じりにそれを誤魔化そうとして 「あら、いいじゃない。美人だったわよ」 などと言う。  そういう問題じゃない。
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