2966人が本棚に入れています
本棚に追加
他の部員達も部室から出て来た。
「うわ、何それ」
眠そうだった目を開いたのは、眠りネズミ。
「どうすんのよ、それ」
ドードーが飽きれたように言う。一方で女王が感心していた。
「そんな大きなもの、よく運んできたわよね」
「本当ですよ、さすが三月ウサギと言うか…。少しは頭を使えばいいのに」
何気にピリリと厳しいことを言うのは、女王の隣にいた白ウサギだ。
「例え部室のドアを通った所で、こんな大きなものベランダに出したら、邪魔で仕方ないじゃないの」
迷惑そうにつぶやいたのは、ベランダで煙草を吸うのが日課のキャタピラ。
(可哀想な三月ウサギ…)
ここまで苦労して笹を運んだのに、こんなにボロクソに言われてしまうなんて、いくらなんでもあんまりだ。しかし誰一人として、三月ウサギの味方はしない。
「いいから、なんとかしろ!」
笹にふさがれて階段を登ることが出来ない帽子屋が、焦れたような怒鳴り声を上げる。こんな時にいつでも冷静なのは門番で
「なんとかと言ったって、どうにもならないだろう。枝の向きがある。上りはいいが、方向転換をしないと下れないぞ。下るなら、まず枝を落とさないと」
と腕組みをした。
「え、せっかくここまで運んだのに?」
三月ウサギが眉を下げる。あたしは思わず三月ウサギの味方をしてしまった。
「どうにかならないかな…せっかくの七夕なんだし、三月ウサギだって頑張って運んでくれたんだし…」
するとチェシャ猫が、何か思いついたようにポンと手を打った。
「部室じゃなくて、屋上に運んじゃったら?」
「屋上…」
部員同士、目を見合わせる。確かに階段は屋上まで続いている。行けない事はないはずだ。が、王が困ったように首を横に振った。
「クラブハウスの屋上は許可がないと出ちゃいけないんだよ」
「そんなことまで許可が必要なの?」
女王がすねたように唇を尖らせた。
「王、なんとかしなさいよ、部長でしょ」
「そんなこと言ったって…」
王は困ったように眉を下げたのだが
「女王命令よ。今すぐなんとかして」
と言われてしまったら、逆らえる人なんかいない。
最初のコメントを投稿しよう!