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「ってか、なんで帽子屋サンが、オレの写真なんか盗撮するンだよ?オレに気があンの?」
オレが今度こそ問い詰めてやろうとすると、あろうことか帽子屋サンは
「そんなもの、あるわけないだろう。気色悪い」
と本気で嫌そうな顔をした。失礼な話だ。オレだってイヤなのに。
「じゃぁ、ナニ」
「まぁ、そう怖い顔をするものじゃない」
帽子屋サンはそう言うと、突然人が変わったように、にっこりと微笑んだ。ゾワッと鳥肌が立つ。
「とりあえず座って、紅茶でも飲んだらどうだ」
「はァ…?」
なんだか気色悪い。でも、とにかく帽子屋サンから話を聞かないことには、先に進まない。オレは渋々ながら席に付き、帽子屋サンとお茶会をすることになってしまった。
アリスも一緒にテーブルにつき、帽子屋サンがお茶を入れてくれる。
「今日はアップルティーにしてみたんだ」
帽子屋サンがそんな説明をくれるし、確かに紅茶は甘い香りがして美味しいのだが
「それで?」
と釈明を催促してやった。
帽子屋サンもついに言い逃れ出来ないと分かったのか、オレが持っていたアルバムをひょいっと取ると、その中をめくって見ながら
「女王や三月ウサギは、見た目が良い。写真が売れるんだよ」
と言う。
「へぇ」
としか返事のしようがないのだが、帽子屋サンに
「うちの部は、万年貧乏だからな。売れるものは何でも売って、部費にしようと思うんだが、どう思う?」
と聞かれて、嫌な予感がした。
「ちょ…っ まさかオレの写真も売ろうとしてるわけ?」
冗談じゃない。普通の写真ならともかく、女装なんて一生の恥だ。
「売ろうとなどしていない」
帽子屋サンはそう言ったが、横にいたアリスが
「正確には、売ろうとしてるんじゃなく、もう売り出しちゃってるのよね」
と溜め息を吐いた。
「はぁぁ?!」
思わず声が大きくなってしまう。頭をぐしゃぐしゃと掻いた。
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