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「なンだよ、それ…」
オレが唖然としながらつぶやくと、アリスは帽子屋を見て
「だからチェシャ猫の許可もなしに勝手なことするのはやめようって言ったのよ」
と言う。しかし、帽子屋は
「許可は後、実行が先だ」
などと目茶苦茶なことを言う。
彼が強硬策を取るのはいつものことだからあきらめるにしても、オレの恥を学園中にさらすわけには行かない。オレは
「どんだけ売っちゃったわけ?」
と聞いて見た。回収しに行こうと思ったからだ。
しかしアリスは
「それがすごい人気で、焼き増しが追いつかないくらい…」
と言い出した。
「な…嘘だろ、そンなの。誰が買ってンだよ」
「男子生徒全般。女子もちょっといるけど」
それを聞いて、くらりとめまいがした。信じたくない。
回収は不可能だろう。
「うわぁ、最悪だ…」
オレがつぶやくと、帽子屋サンはまるで罪悪感のない顔で
「いいじゃないか。誰もチェシャ猫、お前だってことには気付いてないみたいだぞ」
などと言う。
まぁ、ある意味では、それだけが幸いだ。それならわざわざ
「オレの女装写真返せ」
などと自ら恥を暴露する必要はない。
それにもう売ってしまったものは、今さら怒っても仕方のないことだ。
「はぁ…もういいよ。でも売れたら、二割はオレの好きなモンに使わせろよな」
オレがそう言うと、帽子屋は
「二割でいいのか。上手く優勝が出来たら、三割は使ってもいいと言うつもりだったんだが」
とオレの前に三本の指を立てて見せた。
「マジで?三割もいいの?」
オレは一瞬喜んだのだが
(いや、待てよ)
心の中で突っ込んでしまった。
「あの、今、オレの聞き間違いかな…。優勝できたらって言った?」
「いや、そんなことは言っていない」
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