2966人が本棚に入れています
本棚に追加
つかんでいた三月ウサギの胸倉を離し、チラシを広げる。声に出して読みながら、オレは愕然としてしまった。
「ミスコンはミスコンでも、ミスターコンテスト…出場出来るのは、乙女系男子のみ?!」
冗談じゃない。オレはどっからどう見ても男だし、乙女系では決してない。さらに続きを読むと
「優勝者には金一封」
とある。
帽子屋は得意気に
「そこで優勝できれば、部費に困らずに済むじゃないか」
と言うが、オレは断じて納得できない。
「そんな、だからってなんでオレなんだよ?他のヤツにしろって…っ」
申し訳ないが、オレはすーすー眠っている眠りネズミを指差し
「あいつでいいじゃん。あいつで」
と言ってやった。
が、帽子屋サンは首を横に振る。
「あんなに眠たそうなヤツが、まともにミスコンに出られるとは思えん」
「オレだって嫌だよ」
「部の為だ」
そんなことを言われたって、出来ないものは出来ない。というか、やりたくない。
が、帽子屋サンは言った。
「よし。そんなに嫌なら、ここは民主的に投票にしようじゃないか」
「投票…」
「そう。誰がミスターコンテストに出るか、投票をする。票数が一番高かった者は、部を代表してコンテストに出る。それならいいだろう?」
「うーん…それ、帽子屋サンに投票してもいいわけ?」
オレが尋ねると、彼は意外にもすんなり頷いて
「もちろん。投票は誰にしても構わない」
と言う。
「ふぅん…それなら、まァ、いいかな」
投票であれば平等だ。
「よし、では決定だ」
帽子屋サンは、不穏な笑みをにやりと浮かべて言った。
「当選目指して、ぜひ頑張ってもらいたい」
最初のコメントを投稿しよう!