猫とコルセット

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 そういうわけで、不本意ながらにミスターコンテストの投票をやることになってしまった。  なんとしてでも当選するのは避けなくてはならない。 「チェシャ猫がやればいいだろ。なんで僕まで…」  眠りネズミは大いに不服そうだった。 「友達なんだからいいじゃん」  オレがそう言っても、眠りネズミは大事な睡眠を邪魔されたからか、どこか不機嫌だ。 「オレが決めたンじゃないよ。文句なら帽子屋サンに言えって」 「そうだけどさ。大体、ミスターコンテストって何?」  その質問には、オレじゃなくて、三月ウサギが答えた。 「学園内で一番の美女を決めんのが、ミスコンテスト。一番の美女に見える男を決めんのが、ミスターコンテスト」 「それ、おかしくね?一番格好イイ人を決めンのが、ミスターコンテストじゃないのかよ?」 「野郎のコンテストなんか、見ても面白くないだろ」  三月ウサギらしい意見ではある。 「イベント部も変なこと考えるよな」  オレがつぶやくと、三月ウサギは楽しそうに 「いいじゃん、盛り上がるし」 と笑った。  三月ウサギはいい。背も高いし、男として格好いい部類に入るからだ。 「三月ウサギに投票してやるからな」  オレが言うと、彼は眉をひょいと上げた。 「俺はミスコン出てもいいんだぜ」 「やめろ、気色悪い」  それを聞いていた帽子屋サンがぼそりと呟き、三月ウサギは 「なぁんでだよ、冷たいなぁ、帽子屋は。ほんとは俺のこと、大好きなくせに」 などと、帽子屋サンにからみに行った。 「寄るんじゃない!」 「またまたぁ」 「鬱陶しい、この万年発情ウサギが!」  また始まった。帽子屋サンと三月ウサギは仲がいいのか、悪いのかよく分からない。 「はー、うるさい」  呆れたように、ベランダから戻って来たキャタピラが頭を振った。オレは探りを入れる為に、彼女に近付き 「キャタピラは誰に投票しようと思ってンの?」 とこっそり聞いてみた。 「私?うーん、別に決めてないし、誰がやってもいいと思うけど、とりあえず帽子屋だけはないな、と思う」  キャタピラが横目に帽子屋サンを見た。  つい想像をしてしまう。女装の帽子屋サンを。
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