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女王サマが、こくりと喉を鳴らす音が聞こえて、オレは思わずニィと笑んだ。
「ね?見てみたいっしょ。オレが言ったんじゃダメだけど、女王サマが言えば、あいつも言うこと聞くんじゃないかな」
オレがそういうと、女王サマは共犯者の顔で、その赤い唇に笑みを描かせた。
「そうね。言ってみようかしら」
「なら、コトは急いだ方がいい」
オレが言うと、女王サマはぱちんとウィンクを一つして、その場で白ウサギに声を掛けた。
「ねぇ、白ウサギ」
少し離れた所にいた白ウサギが振り向いて
「はい?なんでしょう」
と、従者よろしく女王サマの前に来た。
女王サマのお手並み拝見。オレはそのままソファに居座り、話の行く末を見守ることにした。
「白ウサギ、ミスコンに出たら?」
女王サマがくすりと悪戯に笑う。白ウサギは不機嫌そうに銀縁眼鏡のブリッジを中指で押し上げながら
「い・や・で・す」
ときっぱり言い
「僕は女装趣味はありませんから」
と首を横に振った。その気持ちは、オレもよく分かる。
だが、女王サマは
「あら。でも白ウサギなら似合うと思うけどな。顔も可愛いし、白いドレスが似合いそう。ねぇ、チェシャ猫?」
と、オレに同意を求めてきた。
「んー、似合うンじゃん?」
オレは素知らぬ顔で頷いた。似合うかどうかは分からないが、帽子屋サンよりは100倍マシだ。そしてオレがそのはずれくじを引くより、10000倍はマシ。
女王サマは、胸の前で両手を組み合わせ
「あたしのお願いでも嫌?絶対似合うと思う。なんなら、あたしがドレス選び手伝ってあげる」
と、にこ、と微笑んだ。
女王サマの微笑は、特別だ。顔が美人だというのもあると思うが、なんだか逆らいがたい力があるのだ。しかも白ウサギは、女王サマには弱い。話は俺の計算どおりに進んでいた。
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