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「白ウサギ!」
今にも首を切ると言い出しそうだと思っていたのだが、女王サマが怒り出す前に、白ウサギが釘を刺した。
「もちろん、女王様が僕に協力してくれると言うなら、話は別です」
ヤバイ感じになって来た。オレはいてもたってもいられず、思わず口を出してしまった。
「おいおい、それは規則違反なンじゃないの?」
だが、白ウサギは小首を傾げ
「どこにルールなんてあるんですか」
と言う。
「う…」
それを言われると弱い。白ウサギは続けた。
「ありもしないルールは守れませんよ。ね、女王様もそう思うでしょう?」
「そ、そうね」
女王様が押されている。これはマズイ状況だ。
「女王サマ、何言い負かされてるんだよ」
白ウサギに聞こえないように、こそこそと彼女に囁く。女王サマは苦い顔をしていたが、急に手の平を返したように
「あたし、白ウサギより、チェシャ猫の方がミスコンには向いてると思う」
と言い出した。
「はぁ?!」
予想外の展開に、オレは思わず目を見開いてしまった。しかも白ウサギは、にっこりと笑って
「ですよね、女王様。僕もそう思います」
などと言う。
「ちょ、待てって!なんでそうなるンだよ」
「仕方ないじゃないですか、本当にそう思うんですから」
白ウサギは眉をあげてそう言うと
「七夕のチャイナドレス、似合ってましたよ?」
と、優越感の混ざる笑みを見せた。
「白ウサギ…っ てめ…!」
オレはめちゃくちゃに白ウサギの可愛い顔を引っ掻いてやりたい気分に駆られながらも、どうにか耐えた。
更にそれだけではなく、白ウサギは女王サマに向けて手を差し出した。
「女王命令で、僕には投票しないように部員達に言って下さい。さぁ、立って」
「し、仕方ないわね」
女王サマは差し出された手に指先を乗せて、立ち上がってしまった。
「な…!ちょっと待てって」
オレの制止も聞かず、女王サマは早速、目の前にいた王を捕まえると
「いい?よく聞いて。白ウサギに投票なんかしたら、首を切るわよ」
と言う。
王は突然のことに驚いていたが、両手をホールドアップさせて
「わ、分かったよ」
とうなずいてしまっていた。
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