2966人が本棚に入れています
本棚に追加
「…分かった、なんとかする」
王が降参したように、両手をホールドアップして見せた。が、生徒会に行こうにも階段が通れないのでは仕方ない。
「許可は後、動くのが先だ。いいから早く屋上に出てしまえ」
帽子屋が滅茶苦茶なことを言う。でも、こればっかりは仕方ないだろう。結局、三月ウサギは笹を屋上まで運ぶことになった。
ズザザザッと音を立てて、大きな笹の枝が目の前を通り過ぎていく。正直、あたしが思っていた以上に大きかった。
「どこにそんなパワーが残ってたのかしら」
思わずつぶやいてしまった。とにかく笹を引っ張る三月ウサギが階段を登りはじめ、ようやくそこを通ることが出来た帽子屋は憤慨の面持ちだ。
「まったく、人騒がせな」
「まぁまぁ。いいじゃないの、七夕なんだから」
あたしが帽子屋をなだめている間に、王が屋上を使用する許可を取りに生徒会へと向かった。
「ふん、七夕なんぞどうだっていい」
不機嫌な帽子屋は鼻を鳴らして、さっさと部室に向かってしまう。しかし、女王は違った。
「そうよね、せっかくの七夕だもの。何かしましょうよ」
ぴんと立てた人差し指を口元に当てながら、女王がつぶやくのを聞いて、白ウサギが肩をすくめる。
「とりあえず、願い事を書いた短冊でもぶら下げます?」
「そうね。まず短冊だわ。それから他の飾りも作らないといけないし、チャイナ服も必要じゃない?」
「なんでチャイナ服なんですか」
白ウサギが小首をかしげる。女王はにっこりと微笑んだ。
「あら、知らないの?七夕って、元々は中国の行事なのよ。織姫と牽牛が唯一、一年に一度だけ会える日」
「まぁ、ロマンティックではありますけど…どこにチャイナ服なんてあるんですか」
白ウサギの言うことはもっともだ。が、女王も負けていない。
「それを探すのが、白ウサちゃんの仕事」
とにっこり、完璧な微笑を浮かべてみせる。さすがに白ウサギもそれには敵わない。
「…分かりましたよ。眠りネズミに言って、パソコンで貸衣装屋を調べてもらいましょう」
そう言って、あたし達も部室に戻ることにした。
最初のコメントを投稿しよう!