猫とコルセット

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 火曜日には、話し方をアリスに教わった。 「とりあえず、その男言葉をなんとかしないと」 とアリスが言う。 「なんとかっつったって、どうにもなンないだろ」 「せめて語尾を変えてよ。どうにもならないのよ、とか」  そんな言葉遣いをしている自分を思い浮かべて、ぞわっと鳥肌が立ってしまった。 「勘弁しろよ。冗談じゃないって」 「ほらほら。冗談じゃないわ、でしょ」 「マジで無理!オレがそんな口調、気持ち悪くね?」 「あたしの言葉遣い、気持ち悪いかしら?って言わないと」  ずっとこの調子で、アリスはご丁寧に一つ一つ訂正してくれた。  それを見ていた眠りネズミが、可笑しそうに笑う。 「笑うンじゃねえ」  オレがにらむと、眠りネズミはひょい、と眉を上げた。 「笑わないで、だろ?」 「お前まで、そんなこと言い出すなよ。ノイローゼになりそうだ」 「ノイローゼになりそうよ、だってば」  オレが何か言うと、アリスと眠りネズミと二人して訂正して来るものだから、オレは思わずぐしゃぐしゃと髪を掻き乱してしまった。  だが、これを一日ずっとやっていたのだ。流石にずっと訂正されていると、面倒くさいのもあって、言葉遣いは矯正されて行った。 「とりあえず、喉渇いた…帽子屋サンに頼んで、アイスティーでも…飲みたいな、と思うんだけど」  どうも途切れ途切れのぎこちない口調になってしまうが、どうにかダメ出しは喰らわずに済んでいる。 「まだまだだが、アイスティーくらい入れてやる。休憩にしよう」  帽子屋サンに言われて、オレ達は一度ティータイムにしたわけだが、この間も座り方や話し方に注意してなければならず、リラックスなんか出来やしなかった。
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