猫とコルセット

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 オレよりも、アリスの方が衣装選びを楽しんでいた。 「あ、これも可愛い。チェックのスカートって、なんかお嬢様っぽいよね」 などと、スケッチブックを目をきらきらさせて見ている。  確かに可愛いのかもしれないが、お嬢様ルックなんてオレには似合わない。  オレが最終的に一番気に入ったのは、明るいパープルと黒のレースを組み合わせた衣装だった。 「この中ならこれが好きかな」  女の子の服のデザインなんてよく分からないが、雰囲気は英国のパンクっぽくて、色も派手すぎず暗すぎずで気に入った。 「あ、チェシャ猫に似合いそう」  アリスもうなずいてくれた。だが、それを見た女王サマは 「確かにオシャレだけど、もっと女の子らしい、ドレスとかの方がいいんじゃない?」 と言う。 「お姫様のイメージでしょう?なんだかこれだと、気の強そうなおてんばって感じよ」 「え、そうかなぁ」  オレは首をかしげたが、そこはキャラピラが味方してくれた。 「でも黒は体を細く見せるし、パープルもちょっとセクシーさが出ていいんじゃない?」 「そうよ。それにチェシャ猫には似合うと思うな」  アリスも一緒に頷いてくれる。  それを聞いて、女王サマがオレを見た。つま先から頭のてっぺんまでじろじろと。それから 「まぁ、そうね。チェシャ猫に似合うのが一番かしら」 とつぶやく。アリスは力強くうなずき 「そうよ。それに、ほら。チェシャ猫はお姫様なんだから、なんでも言うこと聞いてあげないと」 と笑う。  キャタピラはホッとしたように笑みを浮かべ 「OK、じゃぁ、このイメージね。Tシャツやジャケットは買えばいいけど、スカートはダッチェスに作ってもらおう」 「あー、いいなぁ。手作りスカート」  アリスが本気でうらやましがるから、オレはふふん、と笑ってやった。 「いいだろ。オーダーメイドだぜ」 「こら。言葉遣い」  すぐさま注意をする辺り、アリスはすっかりオレの家庭教師だ。  衣装のイメージが決まると、すぐさまそのスケッチを白ウサギが、ダッチェスへと届けに行った。
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