ホワイトクリスマス

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 私立S学園。自由、自治、自律がモットーのこの学園は、部活数も多く、それら全てを生徒会が取り仕切ってまとめている。  不思議の国クラブは、いつでも自由に部室を使うことだけを目的にした変わった部だ。本来ならそんな意味不明な部が認められるわけはないのだが、部長である王が上手くやっているおかげで、なんとか活動して行けている。  不思議の国クラブの部室で、その王が溜め息を吐いていた。 「はぁ、どうしよう」 「どうしたの?」  あたしが声を掛けると 「アリス」  王が顔を上げた。  この時期はちょうど期末テストも終わり、クリスマスの近い楽しい時なのに、王は悩み顔だ。 「もしかして、また生徒会?」  あたしの質問に、王がうなずく。 「そう。毎学期末に、必ず活動報告書を出さなきゃいけないんだよ」 「あぁ…」  何か役に立てるかと思って、あたしは今学期に何をしていたかを思い出そうとしてみた。  が、思い出すことと言えば、キャタピラが煙草を吸っていたり、門番が本を読んでいたり、眠りネズミが寝ていたりするシーンばかりで、部活動と呼べるようなものは何ひとつしてない。 「…困ったわね」  あたしも思わずそうつぶやいてしまった。  王は髪をくしゃくしゃと乱して 「本当にどうしよう」 と、あぁでもない、こうでもないとうなり始めた。  その時だ。女王と白ウサギが部室にやって来た。 「うー、寒いですね…っ」  白いマフラーで口元までおおった白ウサギが言うのをよそ目に、女王はつかつかと部室の中央に踊り出て 「ねぇ、クリスマスパーティーしましょう!」 と言う。  一応、紅茶を飲んでいた帽子屋も、本を読んでいた門番も、寝ていた眠りネズミも、目を上げた。 「ね?楽しそうじゃない?」 と女王がにっこり笑うのを見て、全員がすぐに元の作業に戻る。  あくびをした眠りネズミは 「うん、まぁ、やりたいなら好きにしなよ」 と再び毛布に包まってしまった。
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